鹿野学園8年生①「裏ももたろう 物語にない部分を想像してみよう」(2021年6月)
活動目標:物語の背景を自由に想像してみよう
自由に表現することを楽しもう
学習目標:「ツッコミ力」・「一緒にツッコミ力」
設定にあやふやな部分の多い昔話を題材に、素直に感じる疑問をぶつけていく(ツッコミを入れる)ことを楽しむことで、普段と違うものの見方をする必要がある。また、その過程を経ることで“当たり前”のいい加減さを感じることも期待される。
作品として仕上げていく過程では、他者の考えた疑問(ツッコミ)を楽しむ必要もあり、他者の感覚に共感することの面白さも感じることも期待される。
2021年6月21日(月)22日(火)2・3校時 9:45〜11:35
進行・サポート:齊藤・高橋・中垣・後藤 撮影:三輪・奥田
—1日目—
1. アイスブレイク 40min
伝言ジェスチャーゲーム
3チーム(○班7人・△班6人・□班6人)に分かれ、与えられたお題をジェスチャーで伝言して最後まで正確に伝わるか競う。おのおのがなんのつもりで演じていたのか、相手の表現をなんだと想像したのか検証する。(十分な距離を取るため、1m間隔で縦一列に並び、相手を振り向かせるために1mのウレタン棒で肩をたたくというシステムをとった)
2. ももたろうにツッコミを入れる 20min
同じチームで、「ももたろう」の話の中で「なぜそうなった」と感じるところを選ぶ。発表の形式は「〇〇にもの申す」で始め、その後に「〇〇〇」とツッコミを入れる。そのためプリントを配り、チームで相談し、書いてもらう。
3. ツッコミに対する答えを探し、芝居にして発表 30min
同じチームで先ほどあがったツッコミに対し、その理由となる背景(物語)を考え、簡単なシーンを創作、芝居にする。
必ず全員登場し、セリフを言うこと。
4.リフレクションシートを書く
1. 伝言ジェスチャーゲーム
○班「おにぎり」・△班「ソフトクリーム」・□班「ピアノ」のお題で各班挑戦。
□班の「ピアノ」が最終的に「妖怪」と伝わってしまうハプニング。ピアノを弾く手の形がお化けの「うらめしや」の形にみえてしまったようだ。
どの班にもいえることだが、この学年の子達は「とにかくよく見る」、そして「あきらめない」。普通「伝言ジェスチャー」をする時、わからなかったらとにかく、その人のするしぐさをまねして次の人にバトンタッチしがちである。しかし、この子達は自分が理解するまで相手の観察をやめない。長年培ってきた互いのコミュニケーションを大事にしているからあきらめないのであろう。
1巡でやめるはずだった伝言ジェスチャーゲームであったが、おもいのほか盛り上がったので2巡することにしてしまった。
おかげで本来15分の予定だったアイスブレイクが40分になってしまい、後あとのワークに時間のしわ寄せが来ることになってしまったのは失敗だった。ちなみに2巡めのお題は○班「自転車」・△班「じょうろ」・□班「DJ」。「じょうろ」が結果「殺人」になるというハプニングで爆笑。
2. ももたろうにツッコミを入れる
ももたろうの前半部分(川から流れてくるところから鬼ヶ島に行く決意まで)[参考は松居直の「桃太郎」]をプリントし各班に配り、ツッコミどころを各人に考えてもらい、その中から一つに絞って「〇〇にもの申す」と書かれたプリントに「もの申すこと」「ツッコミ」「その理由」「状況」「登場人物」を記入してもらう。
3. ツッコミに対する答えを考える
先ほどのワークであがった「ツッコミ」に対し、その理由となる背景(物語)を考えお芝居にしてもらう。
○班 「桃の木」にもの申す
ツッコミ「栄養かたよりすぎ!」
理由「大きい桃がなぜ1つ?整備人が桃の大きさを争っていたから」
大きな桃作りを競っていた農園同士がイタズラ好きな子供を使ってお互いの桃を落とさせていたら、たまたま一番大きな桃が川に落ちた。
この班はイラストで物語を作ったり、シナリオを書いたりと、準備段階がすばらしく、発表もわかりやすかった。
しかし、室町時代に桃の栽培はなかったと主張するSさんが(彼はイタズラ好きの子供役だったのだが)ソーシャルディスタンス棒でチャンバラを始め、芝居が脱線してしまった。
△班 「おばあさん」にもの申す
ツッコミ「川から流れてきた桃、持って帰るな!」
理由「おばあさんが好奇心旺盛だから」
落ちてるモノを拾って食べる感覚がわからない現代っ子らしい考え方。
おばあさんの好奇心の大きさがそうさせたのでは。
ということでおばあさんの頭の中を天使と悪魔が意見を言い合うこと で表現する。
この班は脳内会議という方法でお芝居を進めようとしたのだが、打ち合わせもほとんどなく(セリフも決まってない)ブッツケ本番でやったため、途中でストップしてしまった。
おばあさん役のWさんがどうしたらよいのかわからず泣いてしまったのに対して桃役のIさんが「俺、桃とおばあさん、両方やろうか」と声をかけていたのが印象的だった。
□班 「桃太郎」にもの申す
ツッコミ「どこから来て、桃の中でどうやって息してたの?」
理由「環境を壊す家族に宇宙人が来て、桃太郎は桃に入れ、酸素マスクをつけ川に流され、家族は、犬、猿、キジに変えられた。」
桃太郎の桃は実は宇宙人の避難用カプセルだった。そしてお供についてくる犬、猿、キジは、元家族で、環境破壊を繰り返す地球人への見せしめとして、宇宙人によって変えられてしまったのだ。
この班も準備段階が長く、ほとんど練習せず本番を迎え、結果家族が何に変えられたのかわからないまま終わってしまった。
家族団らんのシーンで娘役のKさんが「パピー、マミー」と呼んで楽しんでいるのが印象的だった。
4. リフレクションシートを書く
久々のワークショップで楽しかったというのが多かった。しかし、どの班も自分達の芝居に納得いってない様子。明日はもっとガンバルという意見が大多数であった。
また、時代考証に納得していなかったS君がシナリオを書いてくれたので明日、鳥の劇場がその芝居をすることにした。また、準備段階に時間をさく傾向があるので、ハッパをかけるために各班に鳥劇メンバーを1人投入することにした。
—2日目—
1. 省察 45min
昨日の動画を見て先生に、他人の表現に対する見かた(受け入れかた、面白がりかた)を生徒に聞いてみたり、短い時間で作品をまとめあげるにはどうしたらよかったかを聞いてもらいたかったのだが(そうしていただく予定だったのだが)、結局思い出を語るに終始してしまった。この辺はまた、これからの課題ということで。
こちらのアクシデントで「伝言ジェスチャー」がカメラ2台のうち1台分撮れてなかったのは申し訳なかった。
「だから、昨日いなかった〇〇先生にどんな感じだったか見せてほしい」というダンドリで有志を募って伝言ジェスチャーをやってもらうことに(これにはアイスブレイクもかねている)。
最初手をあげなかった生徒達だったが、Aさんが手をあげると、ぞろぞろ続いたのが面白かった。結局キミたちやりたいんじゃん。
ちなみにお題は「かさ」
2. 鳥劇の見本 10min
「人を見つけたら即殺すべし」鬼ヶ島の掟を破り、人間の女おひつを愛し、子をなした黒鬼は、島の宝「極光(ぎょっこう)の桃」に子を入れ、大海に流し、おひつと共に仲間に殺される。流された桃は天に最も近い山に住む天人(あまんと)に拾われるが、途中みずから転がり、川へ流れる。それは「両親の仇を討つ」という子の意志であったのだ。
Sさんの書いたシナリオを鳥劇俳優陣で芝居化し、演ってみる。
どん引きされる。
鳥劇俳優陣のアクが強すぎたらしい。Sくんにも何ヶ所かダメ出しされました。ちなみに配役は、
黒鬼・三輪 おひつ・齊藤 仲間の鬼・中垣 後藤 天人・高橋
でした。
3. 裏ももたろう お芝居にしてみよう さらにグレードアップ 20min
昨日同じテーマのお芝居をグレードアップさせようと各班にがんばっていただきました。
先生が作ってくれたオリジナル振り返りシートによると、今回の手ごたえは上々であったようだ。
ちなみにこのシート縦に①劇作りを楽しんだ②ツッコミのアイデアを出せた③自分の考えを伝えようとした④友達の考えを理解しようとした⑤グループでの役割を果たせた⑥イメージを共有できた⑦楽しんで活動できた
の項目、横に4段階評価を自分で○をつけるというもの。
大半の人がAまたはB評価。D評価は一人もいなかった。それだけ、今回のワークには意欲的に取り組んだようにうかがえる。
実際、感想欄には「(伝言ゲームでもそうだが)知らない人に伝えるのだから工夫が必要だ」とか「細かく面白くを考えて、みんなで話せた」とか逆に「設定をすごく細かく作らないでいいことが分かった」とか、何かしらの発見が見られたようだ。
ちなみに、昨日ワーク中に寝ていた□班のKさんは今回桃役になり、反復横跳びをしながら川下りをするという妙技を見せてくれました。これには鳥劇の齊藤も「時空を超えた感があった。つんぷくかんぷくと言ったらなお良かった。」と絶賛しておりました。
○活動目標及び学習目標について
もともと自由に想像することが好きな子達で、話し合うのも大好き。ただ大好きすぎて、きっちり設定をもうけ、性格づけをして、台本を作って、それから演技に入るスタイルをとりたがるので、どうしても時間がかかってしまう。そこを打破したい。Kさんの反復横跳びのような自由な表現がもっとできる学年であるはず。一番長い時間表現ワークショップをやってる学年なので、どうしても高いレベルを期待してしまう。他にくらべればすごいことしてるのよこの学年は。
○反省
一日目のアイスブレイク40分間は時間とりすぎた。でも楽しそうだったからいいじゃん。
鳥劇の見本。もっと冷静になろう三輪さんのように。