鹿野学園6年生 2018年6月レポート
鹿野学園6年生 2018年6月レポート
「脳内会議(行間)を考えてみよう」(6月5日・6日実施)
台本には演者の動きを支持するような「ト書き」と言われる表現がある。演技を組み立てる際に、俳優はこのト書きに書かれている行動の意味を考えなければならない。これが「行間を読む」という作業。この間に頭の中で巡らされているであろう「やりとり」を想像し、演じてみる。
演劇に特化された内容と全体の盛り上がりを考えて、「日影劇団」という架空の劇団による演技指導という形で進行。ワークショップ全体がお芝居のような非日常を演出。進行者全員が宝塚のようなバリバリのメイクをし、話し方や動きも劇画タッチに進行された。
ファシリテーター:齊藤頼陽
アシスタント:中川、赤羽、村上、安田、國石、後藤
撮影:奥田、浜田
~1日目~
■出会い
子どもたちが部屋に入ってくる時から「日影劇団」の演技を開始し、非日常を演出。劇団員は皆、後ろ向きでウォーミングアップ。子どもたちは異様さに何事かと戸惑っている。劇団員が振り向いた瞬間、そのメイクに顔がこわばる子、これから何が始まるのかという不安な空気が漂う。日影劇団の挨拶ポーズを決めた瞬間、戸惑いのピークと失笑。「雰囲気で寒気がした」という子も。狙い通り!
■ワークショップ
1.「集まってポン!」ゲーム(15分)
本題に入る前に、頭も体も心もほぐしていくため、ゲームを開始。「好きな◯◯」「◯◯といえば」というお題で自分の答えをひとつ決め、自分と同じ答えを持った人がいないか探すゲーム。元気よく声を出し、他の人の答えも聞き、探していく。同じ答えを持った人を見つけるとなんだか嬉しそう。同じ人が見つからなくても、一人堂々と残り、答えを言える。「いろんな人の個性があって面白いと思った」という子もいて、いろいろな答えがあって、それをなるほどと受け止める。楽しんで取り組んでくれた。
2.「だるまさんが・・・」ゲーム(20分)
体も動かし、声も出したところで、今度は少し演劇の要素を取り入れたゲームを。
もともとある「だるまさんがころんだ」遊びの「ころんだ」部分をほかの動作に変えて鬼がお題を出し、その動きをやり続けるゲーム。2チームに分かれてお互いに見合う。「どんなお題がくるかなとドキドキしていた」と少し恥ずかしそうにしながらも、みんな笑顔で取り組む。床に寝っ転がったり、見えない本を読んだり。見ている子たちも他の友達の動きを見て、とても楽しそうだった。見る人の受け入れる感じが伝わり、思い切ってできたようだ。本来の「だるまさんがころんだ」のルールもきちんとやってくれたので、鬼がすぐに捕まり、早くにゲームセットになることも。足が速かった・・・!
3.「しかし」ラリー(15分)
だんだん体もあったまってきたところで、次は頭を使ってのゲーム。ひとつの大きな円になり、「ここにショートケーキがあります」というお題のあと「しかし」カードが渡され、渡された人はその続きの文章を考えていく。どんな答えが出ても「なるほど~」とみんなで言って受け入れていく。「まずい、自分にくるかも」という緊張の面持ちだったが、「しかし」カードも受け取り、そのあとの文章はいろいろな答えが出た。大人では考えつかないような面白い文章もでてきて、「大人より子どもの方が脳が柔らかく想像力豊かとわかった」という感想もあった。どんな答えが来るのか、ワクワクしながら答えを出るのを待つ時間も温かい。発表している子をしっかり見る目線が素敵だった。なかなか浮かばない子も、その雰囲気に後押しされ、頑張って考えて言っていた。普段は仲が良すぎて、からかい合いになってしまう男子グループの子たちも、この時はお互いに一人一人答えが出るまで待つということをしていた。
4.脳内会議を考えよう1(20分)
5.6人づつ6グループに分かれて行った。グループメンバーはランダムにすることで、男女も混じり、いつものグループではない関係の中で取り組む。
「図書館で棚にある本をとったら、そこに1000円札が挟まっていた。しばらく考えてから、図書館の人にそのことを告げる」という状況の頭の中をセリフとして考え、演じて発表を行う。
黙ってお金を持っていく「ネコババ」の考えと、係りの人に「告げる」考えとのチームに分かれ、交互にセリフを言い合う。その時「しかしラリー」でも行った「なるほど~しかし」でつなげていく。
日影劇団の見本を見てもらう。小芝居をいれながら、ここも劇画タッチの演技で見せる。(ここで飛び入りで子ども一人に1000円札を見つけた演技をしてもらった!突然のお願いにも、のっかってすぐの対応力!すごい!)
なんとなくやり方がわかった子どもたちは、グループに分かれ、それぞれの方法で考えていく。両チームに分かれて考えていくグループ、体を動かしながら即興でつくっていくグループ、女子が引っ張っていくグループ、考え込んでいるグループなど、なんだか静かだけど、いつの間にか決まっているグループ・・・。始めはぎこちなかったり、どうして良いかわからなくても、少しずつ話が出来てきたり、練習にも熱がこもってくる。「自分の意見を言い合えた」「いろんな意見を出し合い結果とても面白いセリフができた」など、考える過程も楽しんでいた。
そしてグループごとに発表。緊張している感じだったが、みんなセリフを言い切れた。面白いセリフやなるほどのセリフ、セリフに感情がこもっていたりすると、反応がかえってくる。
「人前に立つのは苦手だけど、褒めてくれて嬉しかった」「思った以上にできた」「さまざまな頭の中が見れた」「◯◯さんが面白く言っていてびっくりした」など、受け入れてもらって嬉しかったり、緊張したけど頑張ってみたり、いつもとは違う友達の一面を見つけたり、いろんな考えがあるんだなあと改めて感じたり・・・。短い時間の中でも、子どもたちの心の動きはすごい。自分とは違う、他の人を認めること、受け入れることが無意識にも出来ていたのではないか。
5.脳内会議を考えよう2(15分)
2回目は1回目でやった時の立場を逆にし、一人の頭の中ということを踏まえ、状況の矛盾をなくして考えた。慣れてきたのもあってか、1回目より話し合いのやり取りが多くなったよう。セリフも前の人のセリフをきちんと受けて考えるようになっていた。チームで一つの作品をつくるという意識が高まっている感じがした。発表はできた、やりたいチームから。やりたくても時間の関係でできないチームもあったため、もう少しやりたかったという、うずうず感と発表という緊張から抜け出せた安堵感とが入り混じっていた。
■リフレクションシートを書く(10分)
今回の活動の自分の気持ちを振り返る。テンション(気持ちの盛り上がり)をグラフに表し、心に残った場面を選ぶ。みんな自分の気持ちを思い出すのに集中し、鉛筆の音が響く静かな時間。
~放課後~
先生と翌日の省察に向けての打ち合わせ。お互いに意見交換。グループごとについていた劇団員からグループワーク中の様子を動画を見せながら報告する。2校時分を「看取る」という立場でじっくり子どもたちを見ていた先生から「結構盛り上がっていた!」「この子がこんな風にやるとは!」「みんながこの子の発表で一目おいたのでは!」など、普段は見られない子どもたちの様子も見られたようだ。明日は先生の素直な感想なども交えながら進めてもらうことに。
~2日目~
■省察(1校時50分)
1日あけた省察。プロジェクターのスクリーンを前に椅子に座っての授業スタイル。担任の先生進行で写真や動画、リフレクションシートの抜粋を見ながら、昨日やったことの振り返りを行う。自分の笑顔の写真が映し出されると、恥ずかしそうにするも、それを見ている子たちもまた笑顔だ。時系列で出来事を追いながら、「ここはどんな気持ちだった?」と先生と子どもたちのやり取りも行われる。グループごとで見ていた日影劇団員(この日もメイクと演技は昨日と同じテンションで行った)からのレポートも聞いて、自分たちがどんなやり取りをしながら作品づくりをしていたのか、当たり前のようにしていたやり取りが実はすごいことなんだと気付く。1日あけた落ち着いた気持ちで昨日のことを客観的に振り返る。昨日のリフレクションシートの「楽しいことがたくさんあって、みんなが一致団結できたと思った」「自分の一皮を脱ぐ学習だ」「劇をするのはこんなに恥ずかしいことが改めて分かった」「みんなで笑ったりしてアドレナリンがいっぱいでて楽しかった」などの感想もスクリーンに映し、匿名で紹介した。(匿名にしてもみんな幼稚園からの付き合いなので誰の字かわかるようだ・・・)
■脳内会議を考えよう3(1校時50分)
省察をふまえ、昨日と同じ「図書館の本に千円札が挟まっていた」という状況で、少しバージョンアップした作品をつくってもらう。昨日と同じグループにわかれ、セリフを書き込めるシートを配る。結末も「ネコババ」か「告げる」かを選ぶことができる。条件は、どちらの結末になっても説得力を増すことと、発表するときに脳内の戦いというのがわかる演出をつけ、演じること。
少し難しくなったお題にも子どもたちは果敢に取り組む。明らかにどのグループも、昨日のやり取りより活発になっている。考えを言わなかった子が発言をたくさんしていたり、男女の境も低くなり、会話のキャッチボールがたくさん行われている。みんな昨日よりいいもの、おもしろいものをつくって発表してやろうというグループの一体感が増している。完成度を上げるため妥協できず、昨日より悩んで話し合いの時間が足らない。
そして発表。早く見せたくてしょうがないグループ、時間が足らなくて最終調整しているグループ・・・。でも、他のグループを見るときは集中して見ている。反応もとても素直で、笑いや納得の拍手。本当の会議のように机を挟んで「異議あり!」とやってみたり、セリフに動きをつけて感情込めて言ったり、堂々たる発表。中には結末を「見て見ぬ振りをしてそのまま本を戻す」にしたりと、いろいろなアイデアに発表する方も見る方も楽しんでいた。
子どもたちも、「みんながいろんなアイデアやセリフをばんばん言っていた」「話し合いのとき積極的だった」「みんなとはなしていくと、どんどん案がでてきておもしろかった」「明らかに今日の方が協力できた」「声もしっかり大きな声で出したりすることができた」「昨日より表現できた」など、グループで取り組むときの楽しさや、昨日とは少し変わった自分を意識していたようだ。