鹿野学園5年生③「絵の中の○○さんと話してみる」(2022年12月)
活動目標:絵から感じてみる。想像してみる。調べてみる。
ねらい :感受性の解放に力点を置く。文字化された情報から入るのではなく、10枚の絵から感
じられるインパクトをまずは感じてもらい、そこから細部を自由に想像する。
日時:2022年12月6日(月)・10日(火)3・4校時 10:35~12:10
@プレイルーム
進行・撮影:中島、中川、村上、下地
—1日目—
0.体ほぐし 10min
1.絵を見て感じる <それぞれ> 10min
2.どの子にするか選んで、調べてみる<以下グループ> 25min
***休憩***
3.加えてみる 15min
4.やってみる 15min
5.リフレクションシート記入 15min
—2日目—
6.M先生による省察活動 45min
・10枚の子どもの絵の言葉を読んでみる
・隣の班の選んだ子への質問を考える
7.もっとやってみる活動 35min
・質問をうけとる→お話を考える→練習→撮影
8.全作品のはじまり部分を鑑賞 10min
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まずは1日目。
ウォーミングアップから。足を伸ばしたり腕を振ったり軽いストレッチ。体のいろんな関節をほぐしていきます。ちょっと体が温まって来たところで「新聞リモコン」。中島さんが広げた新聞紙を両手で持ち、その新聞紙を傾けたりゆらゆらさせたり回転させてみたり。その新聞紙の動きに合わせてみんなも体を動かしてみる。体を傾けたり、ゆらゆら、回転したり、と新聞の動きに合わせてそれぞれいろんな体の表情を見せてくれます。新聞の動きに合わせてそれぞれが独特の表現を見せてくれます。楽しそう。
さてここから今回の本題。
プレイルームにはみんなを囲むように布で覆われた10枚の絵が置いてあります。覆っていた布を取るとそこには世界のいろんな国の子供の絵が一枚に一人ずつ描かれています。インド、ロシア、シエラレオネなどなど。聞いたことのある国もあれば知らない国も。これらを3分間喋らずに一枚一枚じっくり見ていきます。その後、大人のいる3ヶ所に分かれて絵を見て感じたこと、思ったことを言ってもらいます。ここで思いましたが、なかなか感想を言い出せないようです。ポツポツとは出ますが、こちらから振らないと自発的には出にくい印象を受けました。
次は4〜5人の班に分かれてどの子にするか決め、決めたこの国について調べていきます。
インド、ネパール、カンボジア、シエラレオネ、チャドのスーダン難民キャンプ。
図書室の本、地球儀、タブレットを使って調べる。事前打ち合わせで、担任の先生が「調べることが得意な子たちです」と言われていた通り、それぞれのツールを使って自発的にどんどん調べていきます。地球儀で位置を確認したり、本から国の特徴を調べたり、タブレットでストリートビューを見たりしています。
「ありがとう」を現地の文字で書いている子もいました。これまた楽しそう。
ここからどんどん核心に迫っていきます。
改めて子供の絵に戻ります。その子の国について調べたことも活かして絵の中の子供が置かれた状況、どこで何をしているのか、何を思い何を語るのかを考える。まずは鳥劇チームが日本のはな子の絵を使って例を見せます。夕飯時、家の食卓で、お父さんと、外ではカラスが鳴いていて、テレビの音がして、などなど。付箋に書いて絵の周りに貼っていきます。するとちょっとだけはな子のストーリーが見えてきた感じがします。そこで村上、下地が「お父さん」と「はな子」役で短いお芝居を作り披露します。この後の流れを理解してもらったところで班に分かれて作業開始!
話し合い少しずつ付箋がそれぞれの絵に貼られていきます。話し合いの様子を見ていると、班の中では結構活発に意見が飛び交っていました。ここのイメージをちゃんと言葉にして伝え合いどの言葉を採用するのか。もちろん個人差はありますが、しっかり議論できている印象でした。
・「たまには休み欲しいな」
・ひとりぼっち?
・銃声がきこえる
・家族がいない
・戦争で片足がない
絵の周りにどんどん言葉が添えられていき少しずつストーリーができてきました。
さあ、ここからはいよいよ絵と言葉をもとにお話を立ち上げ自分たちで演じそれを撮影していきます。ここでも意見、アイディアが各班どんどん出てきます。早速練習を始める班もあればじっくり話し合いをしている班もあります。冒頭の体を動かすところでも感じたのですが、自分で表現することには慣れている様子。制限時間となり今日はここまで!になりましたが、もっとやりたい!明日はもっといいものを作るぞ!と意欲的な言葉が聞かれました。
2日目
M先生と省察活動。昨日のことを振り返ります。みんな静かに聞いています。頷いたりしていますが、やっぱりリアクションは少なめ。それでも話の内容は理解できているようです。全体になるとちょっと発言することを牽制し合っている雰囲気を感じられます。
そしていよいよ隠されていた絵の中の子のセリフが公開されます。一つ一つの子どものつぶやきをゆっくり声に出してみんなで読み上げます。みんなが想像していた言葉より重い内容に衝撃を受けているのが明らかにわかります。読み上げた後はまた1日目と同様、喋らずにじっくり絵とつぶやきに向き合い、ゆっくりじっくりそれぞれの「心」にしみ込ませていました。
ここで先生から、「隣の班の選んだ絵の子に質問を書いてみよう」。子どもの状況がよりよく分かったところで質問を書き留め隣の班に渡します。
「もっとやってみる活動」は、その質問の答えを「劇」にします。中島さんにコツを聞いてスタート。
自分たちで調べたその国のこと、絵で感じた言葉、子どもの声、そして子どもへの質問。出揃った材料を使ってその子のストーリーを作り撮影です。前日よりはっきりと分かったことを使ってみんな意欲的にアイディア、配役、絵の前後のお話、とどんどん作品づくりに取り組んでいきます。どこを舞台にするか?どういう場面にするか?大人とも相談して。みんな生き生きしてる!作品づくりに前日とは違ったアプローチをする班がほとんどでした。
時間の都合でできた作品をその場で見合うことはできませんでしたが、鳥劇メンバーで持ち帰った作品を見ました。どの作品もクォリティーの高さに驚かされました。しっかり言葉と絵から心で感じとり、それを自分たちの力で表現する。大人でもなかなかできないことを達成したことにただただ驚きです。
★それぞれの作品への鳥劇感想★
○シエラレオネ ソロリス
・ソロリスの食事風景と、そこにあとから3人が入って来るところが自然な感じで良い。その後、しゃべらない時間が少しあるのも効果的。雰囲気が出ている。
・ラストの銃声がとてもインパクトがあった。戦争中のつかの間の休息に、突然銃声がなることによって、登場人物たちが今戦場にいるのだという緊張感が伝わってきた。とても良い演出だった。
○インド アムルータ
・カーテンを舞台美術として使うアイディアが良い。はげまし合う会話が印象的。
・工場長の入ってくるタイミングがいい。仕事の手を休めたアムルータをしかり、ぶって出ていくことでアムルータの置かれた状況がよく表現できていた。
・最初と最後にアムルータのお母さんが彼女の心配をしているシーンがあることで、アムルータの置かれている状況がはっきり見えてきた。
○チャドのスーダン難民キャンプ アハミド
・カメラマンとインタビューアーがアハミドに取材している設定が面白かった。他の班からもらった質問をうまく使って、インタビュー風景という設定を思いついたところがすごい。
・アハミドの話し方、立っている感じから「この先どうしたらいいかわからない」という彼の不安が伝わった。置かれた状況をよく表現できていた。
○ネパール サビトリ
・空間の使い方が良かった。まるで、〈ネパールの山〉にある家に向かって、登っていくように見えた。また、三人の水の運び方が重そうで良く表現できていた。
・母親の料理演技うまい。帰ってきた3人との会話のやりとりから、サビトリ家のいつもの日常である感じもよく伝わってきた。
○カンボジア ケオ
・カット割りが、プロ並みにうまい。ドキュメンタリー作品を見ているようでドキドキした。
・最初の楽しそうな感じから突然爆発が起こり、黒い画面で音だけ聞こえるのも効果的。
・少ないセリフと映像だけでケオの運命を表現しており、地雷の怖さがとてもよく表現されていた。ケオの放心している表情もとても良かった。