鹿野学園7年生 2018年11月レポート(2セット目)

鹿野学園7年生WS 11月27日・28日

ファシリテーター:齊藤
アシスタント:高橋・中垣・安田・後藤・大川
記録:生田・奥田・浜田

タイムキープ:中川・村上

見学者:鳥の劇場事業「若手演劇人の作品向上、社会との関係づくり支援事業」参加者12名

この日は、7年生WS最終回。
鳥の劇場事業参加者である、東京から来た演劇人の大人たちが、研修の一環として見学兼賑やかしで参加。
いつもより多い人数の大人がいることで子供達が萎縮するのではと思われたが、
一緒にゲームを行ううちに慣れた様子だった。

1日目、2日目の順で記述していく。

●1日目

・椅子取りオニ
・名前でポーズ
・みんなで一つの〇〇
・ヤギに人間の美味しいものを伝えよう
→ヤギの専門家である「ヤギ博士」に「人間たちが知っている美味しい食べものをヤギに伝える手助けをしてほしい」と子供達は頼まれる。それを受けて、食べ物を選び、それにまつわる動作や音、イメージを生徒自身の体の動き・声で表現する。「1メエ」と呼ばれる、1章節単位の中で一人1つから2つの食べものを表す動作を行う。
・発表

生徒たちは、真面目で盛り上がってくるのに時間がかかる人たちだった。
即興でいろいろやるより、しっかり考えて取り組もうとする印象。

【椅子取りオニ】
赤・青・黄の体育祭のチームわけで実施。30秒間オニが椅子に座らなければ勝ち。
1回目各チームが終了すると、作戦会議。椅子の配置、人の動きを考えてどのようにタイムを伸ばせるか話し合う。
その後、2回目を実施。この日は筆者がオニを担当。

・10秒前後までオニに座られないチームが多い。
→他学年で行うと5秒と持たないことが多い。
・作戦会議もしっかり行っている印象
・作戦会議後の実施はどのチームもタイムをしっかり伸ばしていた。
→30秒間オニに座られなかったチームも!
・椅子取りオニ終了後にヤギ博士登場。突然変な人が来たので騒然とする生徒たち。

●結果
1回目
赤 8秒78
青 7秒21
黄 11秒

2回目
赤 12秒27
青 30秒!!!
黄 11秒1

【名前でポーズ】
順番に自分の名前を体のポーズで表現。誰かがポーズをしたら、全員でその名前を言いながらポーズを真似する。初対面同士で行うと名前を覚えやすい。1クラスを3グループに分けて実施。普段はパスポーズ(思いつかない人のためにあらかじめ用意するポーズ)があるのだが、この学年では設けないことにしていた。

・どんなポーズをとっていいかわからず、考え込んでしまうため苦手な様子。
・大人の見本の見せ方が、名前を平仮名にした時の形を元にしたポーズだったことから、
より難しくなってしまったのではないか。
・ポーズし出すまでに時間がかかった。
・生徒同士の認められている感覚が薄いのか、安心して自分を表現できる雰囲気ではなかった。
・見学で来ていた東京の演劇人数名に入ってもらったが、難い空気のまま・・・

【みんなで一つの〇〇】
ファシリテーターが提示するお題をグループ全員で表現する。
お題を出された側は、言葉や身振り、手振り等コミュニケーションをとらずにお題に沿ったものを表現する。
他のグループは作り上げられる様子を観察。
見る楽しみと作る際の妙な緊張感が面白いゲーム。

・名前でポーズの後に実施。演劇人はそのまま継続して子供と一緒にゲームに参加。
・1グループごとにお題を変えて実施
・生徒たちは「間違えたくない」「周囲がどうするかを決めてから動こう」と考えているのか、お互いに見合ってしまって動けないグループ多数。
・とある演劇人が「カレー」というお題が与えられ、何を表現しているか聞かれた時「カレーの具に入っているエビです」と答えた。生徒たちは爆笑。カレーにエビが入ってい流という衝撃に一同騒然となった。筆者はカレーを作る際、エビを具に用いることが少ないため衝撃だったが、おそらく生徒も似たような衝撃だったのだろう。
これを機に生徒たちの間に「間違えてもいいんだな」という認識が生まれ、雰囲気が少し和らいだ。

【ヤギに人間の美味しいものを伝えよう】
ここでは各チームで動作を考える際の生徒たちの様子について記述していく。
各チームで進行具合はさまざまだった。

・中垣班 作品名:たこ焼き
話し合いが多かった。振りの一つ一つをみんなで話し合う形式で考えていた。
意見やアイデアへの肯定は言葉で行えるチーム。
普段はリーダーシップをとらない生徒がチームを引っ張っていた。

・高橋班 作品名:かき氷
考えること断固拒否!な生徒(Sくん)がいた。
最初「できません」「わかりません」 じゃあ冷たいポーズして「わかりません!」
→強制的にポーズを指定
2週目は自主的にポーズを増やしたりと楽しかった様子。
別の男の子は、「夏のポーズとか」などアイデア出してくれる 溶けるポーズとか
女の子はイメージ膨らませられるタイプが多かった、すぐ思いつく。

・大川班 作品名:たこ焼き
スムーズ 時間余っちゃって別のポーズ考えてたくらい
動作が思いつかない生徒がいたが、他の生徒がアイデアをあげたりしていた。
→周りがいっしょにやるやりかたを知っている
【「大阪」をどうポーズにするか?】という場面では、
大阪といえば→「グリコ」でポーズを思いつく生徒もいた。
周りが思いついて作り上げた

・安田班 作品名:ラーメン
指示を出す生徒がいた。(Mさん)
Mさんは6月実施のワークショップでは、他の生徒が話すのを待てない生徒だったが、前より人の話を聞く態度が増えていた。
男の子は「でもどうせMの言うとおりになんだろなー」と言うスタンス。
あまり意見を出さなかった
現実的・直接的なポーズが多い 「夏とかは?」「やだ」逸脱したくない
「すきやきはいやだ」と拒否する生徒も。なぜ?
作った動作を発表する順番の案、Mさん「食べる順番で振りやりたい」と他の人「バラバラのほうが面白い」の案の折衷案で発表を行う。

・後藤班 作品名:すし
恥ずかしがりな生徒がいた。
体をとりあえず動かしてみて、気持ちをあげていった。
→思いつかない時は体を動かすと思いつきやすい。
4種類の食べ物で作品を作ることができた。
その中でも一番楽しかった寿司を発表することに
チームの男の子が、発表する作品を決める際「プリンは一人でやるからやめよう」という。

発表時は動作を見て、どんな食べ物を表現しているのか当てるクイズ形式に自然となっていった。最初から何を表現しているのか発表するチームもあった。
「なるほど!」と思うような普段無意識で食べている時の動作や、食べ物から連想した動作まで様々。演劇人たちにも作品を発表してもらった。「大人の作品はすごい」と子供達。これに負けないくらい面白い作品を作ってもらいたいが・・・。

●2日目

・1日目の振り返り
・椅子取りオニ2
・ヤギに美味しいものを伝えよう2
・休憩
・作品作り・練習
・発表

2日目の省察は1日目の実施の様子を1本の動画にまとめて一気に振り返る様式で行った。
その振り返りを踏まえて、担任の先生たちから生徒へ向けた褒めポイントや感じたことを伝える時間を設けた。
生徒は先生に直接褒められることが嬉しい様子。
笑顔が見られ、笑いが起こっていた。

【椅子取りオニ2】
生徒の希望もあり、椅子取りオニをもう一度行った(別のゲームを用意していたが、生徒の希望なので椅子取りオニを優先)。
今度は生徒達がオニを指名
→1日目で『カレー』を表現する際、具のエビを表現した演劇人「エビっさん(生徒呼称)」が本日のオニ。
「椅子の配置を変えないで作戦を考える」という制約がついたので、純粋に人の動かし方でオニを座らせないようにする作戦となった。
1日目で椅子取りオニを行ったチームで実施。さらに各チームに演劇人が1名ずつ参加。
作戦会議の際、とあるチームでは男の子と女の子で分裂してしまい、外部の演劇人が間を取り持つことに。
エビっさんの素早い行動に翻弄され、30秒を達成したチームはいなかった。

●結果
1回目
赤 10秒68
青 11秒64
黄 9秒74

2回目
赤 21秒85
青 9秒58
黄 27秒70

【ヤギに美味しいものを伝えよう2】
→前日に作った動作を組み合わせて、面白いダンス作品にする。
鳥の劇場が作成した楽譜シートに、全15メエが流れる間に「チーム内の誰がどの動作を○メエが流れる間に行う」を書き出す。
組み合わせは自由に行って良い。
ある程度作品が形になったら、鹿野学園所有のipadを使って練習の様子を撮影。
自分たちでより面白くしていく仕組みを取って行った。

生徒たちの様子、チームでの作品作りの様子は以下(発表順)

・大川班 作品名:たこ焼き
スムーズにできた クラスのいじられ役の男の子(Tくん)を焦点に→道筋が出来ると考えやすい
「オチは〜」「ここは何もしない方が〜」演出家ぽいアイデアを出す生徒も
→周りは?Tくんとその生徒で話している。女子は恥ずかしいらしい
Tくんに「(ポジションが)おいしいね」→まんざらでもない感じ

・中垣班 作品名:たこ焼き
ある程度作る際に「こうしたら良い」など、筋道を言ってかないとわからない
3回撮って練習
昨日のリーダーは今日も生き生き
気分屋の男の子は今日は意見少ない
今日は大人と一緒に作った
自分たちで作っていく課題→ハードルが高い
褒められて嬉しいけど
何もしないところを作ってみては?→「怒られる」と言って拒否
もっと何をしてもいい雰囲気があれば

・高橋班 作品名:かき氷
1日目のワークではあまり乗り気ではない印象だったこのチーム。発表時は大人は入らず子供だけで発表を乗り切りった。
後半畳み掛けるように出来上がった
最後の発表が楽しそう
やり方がいまいち飲み込めていないので、どうしたらいいのかわからなかった
ショリショリ(氷を削る動作)楽しい
フリ作るのは早いし楽しいが、組み合わせるのは難しかった
進行が遅いので発表時は真ん中あたりに

・後藤班 作品名:回転ずし
生徒が発言しなかった、でも頑張っていた
寿司ネタが回っているように見えた。
回転ずしのイメージから、フリの組み合わせとストーリーを考えていった。
チームの女の子 ズラしてやったらいい→膨らませていった
突発的に面白いことをする生徒 考える系は苦手?時間をかけて降りてくるの
を待っているひらめきタイプ
※このチームは1日目に参加していた生徒が休みだったので、演劇人が一人入っていた→イナガワさん代役

・安田班 作品名:エビラーメン
エビっさんを加えて、テンション高いチーム シンクロ率の高さが目を引いた。
発表が一番最後→「自分たちは完成度が高い!」
エビっさんの存在がブーストになった。
他の大人も入れたい(先生も一緒にやろう!)
練習5、6回
「動きの精度をよくしよう」→男子の発言
チームの女の子が、エビっさんがチームに入ったことでテンション高かった
男子にも励みに→エビっさん通して話に関わっていた
ワーク時の男子のフォローをもうちょっと→エビっさんいじりへのツッコミで
忙しかった

どのチームも動きの精度を上げ、組み合わせも工夫しているように感じた。
しかし、取り組むワークの内容がむずかしいため、アイデアも出にくかったと思われる。
生徒たち自身も熟慮して答えを出すタイプが多いことから、より時間がかかっている。
この学年は、内側で静かに盛り上がることから外に自分たちの感情をアウトプットすることが少ない。周囲からの承認がもっと大きく目に見える形で行われれば、表現がより大きなものになるのだろうなと感じた。