鹿野学園7年生①「ちょっとだけお芝居の台本を書いてみよう」(2021年7月)

活動目標:セリフの出てくる”状況”を想像してみよう。”状況”を想像しながら、セリフを考え、実際に演じてみよう。
学習目標:自由な発想を促す。想像力をふくらませる。演技の組み立て方(セリフの背景)を意識する。

2021年7月6日(月)7日(火) 2・3校時 9:45〜11:35
進行・撮影:鳥の劇場(齊藤、高橋、中川、奥田、表、堀、斎藤ゆ、下地)

1日目(7/6)
1 椅子取りオニ 25min
2 いろいろな「うん」と、その発表 30min
〜休憩〜
3 穴あき台本 30min
4 発表 15min
5 リフレクションシート 5min

2日目(7/7)
6 省察 30min
7 穴あき台本・よりよい演技のために 15min
〜休憩〜
8 穴あき台本・ブラッシュアップ 35min
9 発表 20min

1日目
〈椅子取りオニ〉
7年生はしばらくぶりの表現WS。久しぶりという挨拶の後はアイスブレイク・椅子取りオニからスタート。
これは生徒の人数分+一脚の椅子を用意し、空いている一脚にオニが座ろうとするのを、その前に生徒たちがその椅子に座ることで出来るだけ防ぎ続ける、というゲーム。
1チーム7人の3グループに分かれて、オニが座ってしまうまでのタイムを競います。
オニだけ走れないというルールがあるため一見オニが不利なようにも見えるのですが、いやはや実はチームプレーを駆使しないとすぐにオニに隙をつかれてしまうゲームだったりするのです。
というわけで最初のチャレンジでは、どのチームもすぐにオニに座られてしまいました。30秒ももてば良い方。
ここで作戦タイム! 椅子の配置も変えたかったら変えていいよ、というヨリさんからの声がけもありました。
どのチームもギリギリまで話し合いを続けて再度チャレンジ。
1チーム目と2チーム目は椅子の配置はそこまで変えず円形に並べたまま。
「対角線、対角線」という言葉がやたら飛び交っていましたが、いざゲームが始まるとなかなか対角線には動けず、むしろ苦し紛れに円に沿ってグルグルと回り出したら、それが意外とオニを苦しめる形になっていたり。
しかしどちらのチームも1分の壁は破れず終了。
それを受けての3チーム目は椅子をなんと直線に配置。
順々に隣の椅子へ移動して、一番端まで行った人は椅子の背もたれ側を走って逆サイドの椅子まで移動! 体力勝負!
まるでベルトコンベアの上を流れてくるオモチャのような生徒たちにオニが翻弄され、結果は1分半越え!
この日の最高記録を叩き出しました。
生徒たちからは「作戦を考えるのが楽しかった」という感想があがり、先生からも「作戦会議の時間に濃いコミュニケーションが取れていたのでは」という言葉が出ました。

〈いろいろな「うん」、とその発表〉
セリフのことを考えてみようということで、まずは鳥の劇場の俳優たちが「え」だけでも色々な言い方があるということを実践。
そしてその「え」の言い方を決めるのは「状況」(相手や場所、何を言われたか)だよねということを確認してから、生徒たちには色々な状況の「うん」を考え、書き出してもらいました。
ここからは1班基本4人の少人数グループワーク。
状況は漠然としたものではなくて具体的にした方が面白いということが班内で共有されると、お互いが触発されあって、どんどんと出すアイデアの状況設定が細かくなっていった班もあり、そうするとたった一言の「うん」からでも、その人の生活や人となりが見えてくるのが面白いところ。
その他にも、「蚊が耳元を飛ぶ時」「F1カーが通過する時」など自由な発想の「うん」を発表する班、似た状況の些細な違いによって変化する「うん」を発表する班など、それぞれの個性と工夫が見える時間になりました。

〈穴あき台本、とその発表〉
休憩を挟んで今度は簡単な台本に取り掛かります!
ややコッテリ気味の鳥の劇場の見本を見てから、話し合いの時間へ。
扱う台本は、

A 次の時間、(  )だね。
B 宿題やった?
C うん。やった?
D うん。
( ) (   )

というごくごくシンプルなもの。
しかしこれだけのものでも、設定する「状況」によってやりようは無数にあります。
登場人物たちの人間関係は? みんな宿題をやってるのか、やってないのか? やっていたとしても、それに自信はあるのか?
そしてカッコの部分は自由に埋める、ともなれば各班で全く違うものになるのが当然。
正解なんてもちろんないわけですが、だからこその楽しさと難しさを生徒たちが感じている話し合いの時間だったように思えます。
なかなかどこからどう進めていいか掴みかねたり、ちょっと脱線して話していたことが思わぬ形で状況を設定する際のヒントになったり。
これは翌日の省察で先生も仰っていたことですが、みんな確信のない中で発言するわけですから、そこでは聞いている人の相槌や肯定的な反応が話し合いを進める上でとても大切になってきます。
そうやって皆で手探りで進めていき、全ての班が無事時間内に台本を完成させることが出来ました!
そして発表!
マスクをつけていて意識的に声を大きくしないとなかなかセリフが伝わりづらいという中ではありましたが、それでも充分それぞれの班の特色が溢れている発表でした。
驚いたのは、カッコになっている最後だけではなく、セリフが始まる前の部分にも言葉を加えていた班がいくつかあったこと。
ワークの主旨をとらえつつ、そこに遊び心を持って臨んでくれた生徒たちの姿を見ることが出来ました。
とはいえまだまだ深めたりもっと工夫したり出来るはずだから、明日はさらに突き進めていこうということを共有して1日目は終了です。

2日目
〈省察〉
全体的な1日目の振り返り動画を皆で見てから、先生主導の省察の時間へ。
まずは班に分かれてそれぞれの話し合いの様子が撮影された動画を見たのですが、その際に先生が「なぜ昨日の話し合いがうまくいったのか?」「今日の話し合いをもっと良いものにするためにはどうすればいいか?」を考えながら見てくださいと告げられました。
動画を見終わった後は各班で話し合い、先生の質問への答えを用意します。
印象的だったのは生徒の回答に対する先生のさらなる質問。
例えば「雰囲気が良かったから意見がいっぱい出て、話し合いがうまくいった」という答えには、「なぜ雰囲気がよかったのか? どう雰囲気がよかったのか?」という質問を返します。
そうすることによって、生徒たちの考えが進み、ふんわりとした答えがきっちりと言語化されるということが起こっていました。
ちなみにこの時の追加質問に対する答えとして生徒の口から出た言葉が上述の「相槌」です。

〈穴あき台本・よりよい演技のために〉
ここからは昨日の発表をもとに、それをどう深めていくか、面白くしていくかを考えていきます。
まずは各班の発表で良かったところを動画で紹介。
細かい設定によって面白みが増していたところ、個性溢れる大胆なアレンジ、小さな工夫だけれどもそれによって深みが増していた箇所……。
その上でヨリさんの「声を大きくしていこう」「もっと適当になってもいいよ」という言葉があり、ここでいったん休憩になりました。

〈穴あき台本・ブラッシュアップ、そして発表〉
休憩明けは各班に分かれて、昨日の発表を進化させるための準備へと取り掛かります。
状況をさらに細かく設定して、それに沿う形で台本の前後を膨らまします。
途中からはどの班も立って動いての練習を始めました。
何度も繰り返し演じてフィードバックを重ねていく班もあれば、一度演じたものを撮影してそれを見ることで改善を図る班もあり。
中には煮詰まってしまい先生からのアドバイスをもらう班もありましたが、その言葉を鵜呑みにするのではなく、それをあくまで種として自分たちなりに発展させていました。
そして発表!
大きな動きをつけて練習している班がいくつかあったため、1日目より広いスペースを用意しての発表となりました。
まずは立て続けに3つの班が立候補しての発表!
同級生が見てる中で演技をする(しかも自分たちで考えた台本を!)ことはこの歳ごろの生徒たちにとってなかなか気軽には出来ないことだと思うのですが、この勇気は凄い!
そしてどの班も自信を持って発表するから面白い!
その前のめりな姿勢、堂々とした演技から、肯定的な空気の中でアイデアを出し育ててきたんだなということが垣間見えるようでした。
立候補をしなかった残りの班も指名されたらためらいを見せずに発表。
全ての班が1日目の発表をもとにそれを大きく飛躍させた台本を、見事にやりきっていました。
時にはよく知っているはずの同級生が普段とは全然違う姿や行動を見せ、大きく盛り上がる瞬間も何度か。
多くの生徒たちが自分の殻に閉じこもることなく相手の言葉を聞き、話し合い、演技をしたからこその素晴らしい発表の時間だったと思います。