鹿野学園5年生③「絵を起点に。~じっくり力。他の人のことを想像してみよう」(2020年12月)

鹿野学園5年生 演劇を使ったワークショップ

目標 じっくり力を鍛える=じっくり心を澄ませて、他の人のことを想像してみよう

今回のワークショップでは、10枚の各国の子供達の姿を描いた絵を見てもらい、そこから何を感じるか、何を想像するか、その丁寧な受け入れと言語化に力点を置いてみる。
文字化された情報から入るのではなく、10枚の絵から感じられるインパクトをまずは感じてもらい、そこから絵の細部を見、言葉を聞き、10人の同年代の人たちの生活や、たいへんさ、あるいは楽しみや希望を感じようとすることを通じて、「じっくり力」を鍛えることを目指す。

進行:中島、じゅんじゅん 記録:もりっぴー、藤木、奥田(2日目のみ)、中川

■■■1日目【WS】 12/7(月)3、4校時 10:35〜12:10@ランチルーム
円形のランチルーム。天井にはステンドグラスがあしらわれている。
机と椅子を隅に寄せ、真ん中を広くあける。くるみ割り人形の音楽。静かな、気持ちの良い空間。そこに、世界各国の子どもたちの絵がぐるりと円を囲むように置かれる。絵には、いろいろな色の布がかけられる。
今回、お手伝いをお願いしている5年生のもりっぴーの、朗読の練習の声が響く。
F先生、5年生のみんなが入ってくる。
「今日は、いつもの表鷲科とはちょっと違うことをやってもらいます。想像する、ということをやってもらいたいと思います。」
F先生の言葉の後、アイスブレーク。
いつもより静かに体を動かすもの。肩を上にキューッと上げて、脱力。
手をぶらぶらしたまま体を揺すってみる。慣れない動きに戸惑い気味のみんな。
でも少しずつ、何かがほぐれていく。いつもと違う体験へと、入っていく。そこから、本編へ。
みんなをぐるりと取り囲んでいる絵から布が取り払われ、各国の子どもたちの姿が現れる。中島さん「9歳のこの子たちが、鹿野学園に来てくれた、と想像してみよう」絵を見る。3分間、無言で。
その後、二人組みになって、何が気になったか話し合う。
また、別の人と二人組みになって、何が気になったかを話し合う。
それからまた、2分間無言で絵を見る。
さーっと歩きながら見る子、絵の前で立ち止まって見つめる子。足のない子どもの絵の前で、足を片方曲げてみて、その子になろうとしている?子どもたち。
それから隠してあった絵の説明部分をじゅんじゅんともりっぴーで朗読。
みんな、集中して聞いている。
そして、それぞれ絵の中の一人を選んで、付箋に
・その子がいる場所
・周りにいそうな人や生き物
・周りでどんな音がしているか?
・その子どもが言っていそうな言葉
を書き、その付箋を絵の子どもの周りに貼っていく。
みんなで、絵の10人の子どもたちについてクラスみんなが付箋に書いたことを、じっくりと読んでみる。
それから5班に分かれて、担当する子どもを決め、各人がその子どもへの質問を考えて、書く。なかなか質問が出てこない班もあり。みんな、なかなか苦戦しているもよう。想像すること、じっくり考えること。
リフレクションシートを書き、1日目終了。

■■■2日目【省察&WS(昨日の続き)】

F先生「今までのWSは動的な活動だったが昨日は静的な活動だった。じゃあ活発じゃない?活発だったと思う。動きは少ないけれど、想像をいっぱい働かせていた。想像して、じっくり考える力がみんなについてきていると思った。」
昨日のラッシュをみんなで見る。
もりっぴー撮影ならではの面白い構図のショット満載。絵の見方も、各人様々であることがよくわかる。そして、みんなの考えている姿。
F先生「リフレクションシートのグラフの波が、今までだと上がり下がりがあったが、昨日のものは穏やかだった。みんなの書いてくれた中で、〈付箋をよく考えて書いたから、心に残った。〉〈絵のことを考えてテンションは下がったけど、心に残った。〉とあった。静かだけど面白かった、じっくり考えて楽しんだ、ということじゃないかな。」
昨日の質問を画面に映し、みんなで見ていく。
「病気になった時は誰が代わりに水を運ぶの?」
「なぜ怪我をしてまでゴミ拾いをするの?」
「銃のうち方を教わる時はどんな気持ちでしたか?」
「お父さんが殺されて、お兄ちゃん、お姉ちゃんもさらわれて、お母さんと逃げてきて、今どんな気持ちですか?」
「あなたは、自由になりたいですか?」
みんなで答えを考えてみる。みんなにとっての自由とは?自分にとっての自由と違う国の子どもの自由は違うかもしれない。

それから班に分かれ、昨日考えた質問の答えを班の人たちと考える。
ここでも想像を働かせて、みんな悩みながらも答えを書いていく。
中島さん「本人がいないけど勝手に想像する。これは、実は演劇がそうなんです。」
そして発表タイム。鹿野学園に来てくれた世界各国の9歳の子どもたちを温かく受け入れて、国際交流パーティーをしよう!という試み。
もりっぴーとじゅんじゅんが司会となり、班ごとに一人の子どもへの質問&答えることで、その子を紹介してみよう、ということをやる。
その子どもになった人はみんなの前に置かれた椅子に座り、他の人はマイクを持って一人ずつインタビューしていく。
みんな、あまりやったことのないことに照れてしまい、笑いが起こったり、質問と答えがささーっと流れていったり。
しかし、質問と答えは、とてもよく想像して書かれていることがわかる。

今回、初の試みで、絵を見て想像する、じっくりと考えてみる、会ったことのない誰かを想像して暖かく受け入れる、ということをやってみた。
こちら(鳥劇)の課題はいくつかあったが、生徒のみんなは、とてもよく想像して、じっくりと考えることをやってくれたと思う。みんなに書いてもらった付箋や、質問と答えの紙、リフレクションシートを読むと、それがよくわかる。

最後に、タバコの葉を束ねる仕事をしているサンドラさんという女の子の絵を見て、子どもたちが考えた質問と答え。
「あなたはゆうふくに暮らしたいですか?」
「生きているからこのままの生活でもいいわ」
このやりとりを聞いて、私はハッとしました。自分だったらどんな答えを想像するだろうか。他者に、どんなふうに思いを馳せられるのか。今回のWSを通して、そんなことを思いました。(ふ)
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運営上の課題:
子どもたちにとっては2日間を通して、書くことと少人数での会話はあっても、
感じたことや気づいたことを〈みんなの前で『発言』〉する場面設定がなかった。
そのため、いきなり〈みんなの前で『発表』〉となることに、恥ずかしさや不安が見られたのでは。
→先生との事前打ち合わせでの確認。
→先生による省察の時間に「子どもたちによる発言場面」が用意されなかった場合は、鳥劇が臨機応変に対応していくか?