鹿野学園5年生①「こわれた千の楽器」(2021年6月)

活動目標:提示したきっかけを元にイメージを広げ、表現することの楽しさを味わう
学習目標:4年生での活動を踏まえ、派生するイメージを身体の表現に変換する。仲間との共有(発表含む)

2021年6月10日(木)、11日(金) 3.4校時(10:35〜12:15)
進行:鳥の劇場(中島、れなぞう、よまる、藤木、みなと)

–1日目–
1.アイスブレイク 10min
声出し拍手回しと「○○といえば」ゲーム
2.物語体験 月が去るまで 15min
3.台詞を考える。月に見栄を張る台詞 10min
4.発表 10min
–小休憩–
5.物語体験 楽器たちの絶望まで 10min
6.グループで一つの楽器になり絶望の言葉を考える 10min
7.発表 10mln
8.リフレクションシート記入 15min
9.省察
10.もっとやってみる活動

1.アイスブレイク
5班に分かれ集合、それぞれが輪になって拍手と掛け声を送る。「ハイッ!」「はいっ」掛け声が響く班もあれば少し照れている班もあった。慣れてきたら手裏剣を回したりお辞儀を回したり、足を突き出し回したりと様々な派生遊びが生まれ、笑顔が増えてきた。緊張はほぐせたみたい。
続いて中島さんがみんなを集め円になると「梅雨といえば!」と口を開く。隣の子へ振って「洗濯物が乾かない!」と答えれば、みんなで一斉に「なるほど〜!」更に他の人へ「洗濯物が乾かないといえば……」
どんな事でもなるほど、と声に出して受け入れるようになるとみんながどんどん口を開くようになっていった。

2.物語体験 月が来るまで
楽器ってなに?から始まった中島さんのトーク。「じゃあどんな楽器がある?各班で挙げてみて!」各班に手渡される紙とペン。班ごとに輪になって、『こわれた千の楽器』の台本にあった楽器から知っていることに驚くくらいの難しい楽器まで、なんと21個も出してくれた班もあった。
改めてみんなで台本を読み、楽器倉庫に眠っている壊れた楽器になってみよう!…楽器ってどうやれば良いのかわかんない!イメージが湧かないのか、戸惑う5年生。そんな中でいきなり飛び出した子が!
背中を地面につけて寝転がり、体育座りの要領で膝を抱えて足の裏を天井に。こ、これは…太鼓!すかさず中島さんが叩きにいくと、元気のいい音ではなくぽすぅん、と掠れた音が。太鼓は太鼓でも、どうやら皮が破れて鳴らなくなってしまった太鼓みたい。お題は壊れた楽器、お見事!
しかしやっぱり楽器になる、というイメージが湧かない様子。倉庫にいそうな猫やネズミになってみる子、なんとかピアノになってみようとする子、悪戦苦闘しながら次のお題に。

3.台詞を考える 月に見栄を張る台詞・4.発表
今度は壊れた楽器を決めて、どこが壊れているかも決める。次に窓から覗いてきた月に壊れてないやい!と見栄を張る台詞を考える。あーでもない、こーでもない、うんうんと唸りながらできた台詞は詩的で素敵なものばかり。実際にれなぞう演じる大きな満月へ向かって10人ほど発表。
月に反論しちゃう子や、壊れていない箇所で頑張って鳴らそうとする子、様々なアプローチがあり感心、そして勉強させられました。

5.物語体験 楽器たちの絶望まで・6.グループで一つの楽器になり絶望の言葉を考える
一息ついたら今度は、月が去った後楽器たちの悔しい気持ちや不安な気持ちを全員で読む。
じゃあ今度は先ほどとは違う楽器、違う壊れ方で考えてみよう!班になってどんな楽器がいいか考える。決まった班には人数分の短冊が渡され、それぞれの楽器の気持ちになって台詞を書いてみる。
「おっ、これいいじゃん!」「ここを、こっちにしたら?」出来あがった班員の台詞を並べ替えて一つの長い台詞を作り上げた。
8.リフレクションシート記入
話し合いが盛り上がってきて、さあここから!というところで時間切れ、振り返りを書く時もみんな笑顔。○○さんが盛り上げてくれて嬉しかった。△△さんがいいことを言っててすごかった、など他の人を褒める感想が多かったのもGood!
–2日目–
9.省察
「今日は皆さんに特別ゲストをご紹介します!」3校時開始と同時に担任の軸原先生が口を開く。それでは連れてきますねー!と裏に引っ込んで数秒後、どこからか鳥取が誇る名探偵のテーマが!
鍵盤ハーモニカを吹きつつ名探偵みきえ登場!先生じゃないよ、名探偵だよ。
しかしどうやら名探偵は謎が解けなくて困っているらしい。
「なんで昨日はみんな『いい雰囲気』だったのか分からないんだ!」
…と、そこで名探偵が見つけたのは『いい雰囲気』を示唆するみんなの感想や、やる気グラフという証拠。
そしてもう一つ。重大な証拠VTRがあるの、とタブレットを各班に配った。そこには各班ごとのいい雰囲気VTRが残されており、何をして笑顔になったのか、なぜ楽しかったのかを各班で分析させる。
「さぁこれらを使って、なんで『いい雰囲気』だったのかを各班で『絵』にしてみてくれ!」
「絵に!?」と驚くみんな。正直かなりの無茶振りだ。しかしさすがは5年生、昨日と同じ『いい雰囲気』のまま各班ごとに話し合いが進み、「みんなで協力できたから」「話し合いを盛り上げる人がいたから」など沢山の答えが出た。
–小休憩–
7.発表
休憩を終えやる気が上がってきた様子の5年生、名探偵の強力な助っ人として呼ばれた中島さんが「小五郎のおっちゃん」の演技で決定的証拠をモニターに映し出した!
それは先日みんなで作り上げた絶望の言葉そのもの、一班から順番に台詞のねらい、良い点、面白さを次々と解説していく。生徒からは、驚きや感嘆の声、そして面白い!という声。否定の言葉は見られず、全員がそれぞれの発表を楽しみ、受け入れているように見えた。
10.もっとやってみる活動
まだ物語は終わっていない。壊れた楽器たちはお互いを補い合って新たな楽器を生み出していく。それになぞらえて壊れた楽器をどんな楽器と合わせるか、それはどんな音で、どんな気持ちなのかを班で考える。
「どんな楽器がいい?」「ラッパを組み合わせたい!」1日目よりは楽器のイメージがついてきたのか、まだ少しぎこちないながらも自分たちで考え、音や気持ちを生み出していく。そんな様子を見て満足そうに頷いていた名探偵はいつの間にか姿を消し、先生の姿に戻っていた。

筆者メモ
「今の5年生には自由でいてほしい」と語る担任のJ先生。実際男子も女子も関係なく話せている生徒が多く、今年度から仲間になった中国からの転校生Sくんとも積極的に関わり合っていて、全員仲が良く明るいクラスという印象だ。
今回、5.物語体験でSくんは中国語で、壊れたピアノの気持ちを書いてくれた。翻訳したものをみんなと共有すると、おぉー!という声が漏れており、国の境界を越えて「今年度の5年生」を創り上げているのだと感じた。

・活動・学習目標に関して
今回は題材が楽器だったが、モノは喋ったり、歩いたりできない。それを人で表現するのは難しい、という固定概念を覆すのに一苦労したように思う。楽器を表現してみて!と言われた時「考えたこともなかった」という表情をしていたのが印象的だった。しかし、やってみよう!という生徒が出てくると少しずつ、少しずつ楽器を表現する生徒が増えてきた。更に「壊れた」楽器にイメージを派生させ、表現した楽器に修正を加えていく生徒も見られ、チャレンジしてみる生徒が増えると周りを刺激して更にチャレンジする生徒が増える、という好循環があった。この意味では学習目標は達成していると思う。

・鳥の劇場の反省点
-楽器になってみようの前、例えばこんな楽器があって、こんな音がでるんだよ!という簡単な楽器紹介ムービーを作った方が良かった。この楽器の音は聞いたことがない!という生徒がいた場合、他の人がそれを伝える手段がないため、共通のイメージがつきにくい。
-なぜいい雰囲気だったかを絵で表現してみる。で出た絵の意味や表現をもっと具体的に掘り下げ、認め合うことや協力すること、そしていい雰囲気を作ること。それがどんなに素晴らしいかをもっと伝えた方が良かったように思う。時間の都合上触るくらいにとどめたが、勿体なかった。